瞬間
サウナを出て冷温室に入る。
心地よくて瞑想に興じてみる。
まずは周りの空間を認識する、楽な姿勢になりゆっくりと息を吸い、吐く。
それから地面に押し付けられる身体を感じる。
自分の感情及び思考を道路を行き交う車のイメージに変換する。
俺は道路の外側に座りそれをただ眺めている。
干渉せずに、ただ俯瞰し行き交う車を見つめる。
心が我から離れていく。
悲しみも喜びもただそこにあって水中の気泡のように水底から水上へと上がっていき消える。
ただ過ぎゆくそれら、これからも過ぎ去るものに過ぎないという予感。
頭上の水面で太陽が耀うのを感じている。
全ての音をむきだしの心が感じている。
目を開けて深いところから引き上げた心を身体へと戻していく。
このとき自分の精神と心は別の場所にあったものだと認識することができる。
まるでしばらくこの世にいなかったような浮遊感。
目を開けてじっとしているとやがて意識が身体に戻っていく。
糸で操られるように小指から親指まで順に動かしてみる。
瞬間。瞬間が、身体に刻まれていく。