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最近、タバコを吸うようになった。以前から、酒の席とかでたまに友人にもらって吸ってみたりはしていたんだけど、なんだかピンとこなくて、習慣にはなっていなかった。でも2ヶ月くらい前に、クールスモーキングという肺に入れない吸いかたを知ったのを契機に、両切りのピースを1日に1本吸うか吸わないかくらいの頻度の、ささやかなスモーキンライフが始まった。それからというもの、朝は以前より40分早起きするようにして、コンビニの店前の喫煙エリアで、コーヒーを飲みながらタバコを吸うチルの時間を確保するようになった。なんだかあべこべだけど、喫煙を始めることによって、俺は健康的な生活リズムを得ることができた。

空に昇って消えていく、吐き出した煙をぼんやり眺めていると、心がしいんと凪いで穏やかだ。毎日それなりに楽しいけれど、それでもやっぱり、どうしようもない悲しいことや、不安や、焦燥が、しばしば不意に現れては、心をちくちくと苛む。そんな諸々を、吐き出す煙にあずけて…なんつって。

今朝も例のごとく、駅前のセブイレでタバコをぷかぷかふかしていた。ぼんやりしている俺の目の前を、ぱりっとしたスーツを着た、たくさんの初々しい新社会人たちがきびきびと歩いていき、それらはみんな駅の改札に吸い込まれていく。そんな春の瑞々しい営みは、なんだか微笑ましかった。左手を見やると、工事現場のバリケードの向こうで、大きな黒い重機が、その精巧な造りの立派な首をうな垂れて、静かに眠っている。そのあたりから、現場作業員たちの「安全ヨシ!」の勇ましい呼びかけが、電車の走行音よりも大きく聞こえてくる。俺はそんななんでもない朝の情景を、なんとなく、心に留めておくことにした。こんなことも知らないうちに溶けて忘れてしまうだろう。ちょうど今吐いた煙のように。その脆弱さに気づけないほどに儚いものは、いつだって美しい。

ある人にうれしいDMをいただいた。ずっと読み返してにやにやしてる(にやにや)