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帰路、夜の街はただ静寂。暖色の街灯に照らされた車のシルエットが滑っていく。走行音が遠ざかると、跨っている自転車の前輪にあるタービンの回転音が徐々に台頭する。やがてそれは次の走行音にかき消される。その走行音のあとに、また回転音、夜の静寂は、音をどこまでも放っていく。

頭のなかにあるたくさんの部屋。全部電気がつけっぱなし。ひとつひとつ、スイッチを切る。ぱちん、ぱちん、部屋から部屋へと歩く。一本道、巻き貝のうずの内奥へと踏み込んでいく。ぱちん、ぱちん、ふかいまどろみにみたされる。海がみえる。あれは垂水だったか、それとも丹後だろうか。門司だったかもしれない。ふかいまどろみにみたされる。