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日付けが今日になるころにエデンの東を読み終わった。少し参っていたのも相まって、クライマックスで感情移入しすぎて視界にぱちぱち火花が閃いて、目眩がした。
午前4時あたりから間歇的に入眠と覚醒を繰り返す。うつらうつらしているうちに、いつの間にか外は明るくなっていて、どこからかバスケットボールをつく音と、子犬がきゃんきゃん鳴きわめく声が、しばらくの間聞こえつづける。家の前にある川沿いの道を、バイクがすごい速さで走り抜ける。平坦に伸びていく中音域の走行音はやがて萎え、フェードアウトしていった。
外に出ると、昨日一昨日にくらべて少し暖かい気がする。でも乾燥がひどくてやたら喉が乾く、唇もがさがさ。ニベア塗ってきてよかった。
なんとなく直帰する気分じゃなかったから、帰り際に喫茶店で日替わり定食を食べた。今日のメニューは焼肉と白菜と厚揚げの煮物。煮物の汁を啜ると、暖かい白菜の苦味がやんわり舌に拡がって、心地よかった。
気分がいいし、なんか酒でも買って帰ろう。
ふいに異様に大きくて、恐ろしく濃い月が眼前に現れて、ぞっとした。それに魅入られてしばらく動けない。