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まだまだ寒い。ぴんと張った冬の快晴。空は高く、遠くで雲がまばらに散らばっている。雲たちの規模はまちまちで、うすくて小さいのや、厚くて大きいの。きれぎれのちぎれ雲。それらが悠々と気ままに漂泊している。

側道に錆色のキジバトが一羽、ぽてぽて歩いている。しばらく見ているとハトは矢庭に、ぱさ、と飛び上がって、浄水場の柵に乗った。
無風の日曜日の朝。町は、穏やかな水底のような静けさ。辻や、公園で、すずめたちの鳴き交わす声だけが響いている。そのささやかな喧騒が、静謐を際立たせていた。

近所の毎朝通りかかる、小さな寺の門戸の瓦屋根の両端に、立派な鬼瓦があることに気が付く。小径を睥睨する精巧な作りの、つやつやした厳しい鬼2匹と目が合った。母が小さい時分に、この寺で巨大な狒々が飼われていたという。本当だろうか。
寺を過ぎて少し行くと、郵便局の前の通りを大きなぶち猫が、なにか急用でもあるかのようなせかせかした足取りで、家々の間の狭い路地へ入っていった。

昨日かしわを食べた と言ってくるから、柏餅かと訊ねたら、チキンステーキのことだった。関西では鶏肉のことを、しばしば「かしわ」と呼ぶ習慣があるらしい。両親や祖父母ですら、そんな呼称を用いているのを見たことがなかったので、知らなかった。