読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

29

朝、空は鉛色でシャーベットみたいな重いみぞれがぼとぼとびちゃびちゃ降っていた。みぞれは時間が経つにつれ、雪、小雨、と変化してまた軽いみぞれを経て重いみぞれへと戻っていった。変転は風が強くて雲の動きが速いせいだろうか、盈虧を連想して少し可笑しかった。

帰りの夜道は行き交う人たちみんなが影にみえる。大きいのや中くらいのや小さいの、手を繋いだ親子や、寄り添った恋人たちと思しきもの。影たちを目で追ってみる、やがて追い越したそれらは視界から離れ、後ろへ吸い込まれていく。
月を見上げると上下に雲がかかって、誰かが顔に被せた両手の隙間から、何か怖いものをおそるおそる伺っているかのような様態だった。しばらく眺めているうちに月はその上下の雲に覆われて隠れてしまった。

帰路の途中にある高校の正門の前を通ると、制服を着た女の子3人とおばさんの4人が円になって歩道を塞いでいた。4人はなにやら楽しそうに談笑している。何をしているのかと少し気になってよく見てみると、真ん中に白い大きな犬が抱かれていた。4人の腕の中の犬は溌剌として健康そうで、眼は欄と輝き、息を弾ませてきょろきょろしていた。僕はイヤホンを付けていて、それがどういう状況なのかわからなかったけれどあまり興味も湧かなくて、とりあえず鈴をじりと鳴らすと4人は端に寄って道を開けてくれた。彼女らが寄ったときに犬の体勢が少し崩れた。その横を通りすぎるときに、バランスを戻そうとした犬がこっちのほうに少し体を乗り出したのが見えた。